中学受験生よ、よく眠り、よく学べ
現代の医学を以(もっ)ても睡眠の全貌は解明されていません。しかし、だからといって睡眠がわれわれの健康にとって極めて重要な位置を占めていることにあえて異を唱える人はいないでしょう。
肉体、精神双方の疲労もいったん床に就いて朝、起きてみれば嘘のように取れているという経験は誰しも覚えがあるのではないでしょうか。
十分に眠るということは、わたしが指摘するまでもなく非常に健康的です。学校で学んでいる学生や会社で働いている社会人には判り切った話であるかも知れません。
よく眠るために、われわれは朝から起きて晩まで働かなくてはなりません。換言すれば、健康を維持するために、われわれは規則正しい生活を送るように努めなければなりません。
ドイツの哲学者として高名なカントについて彼の暮らし振りを見て周囲の人々が時計の時刻を合わせた、という有名な逸話が残っています。
この話は父の十八番(おはこ)で少年時代によく聞かせられたものです。しかし、残念ながら、そこまで徹底した規則正しい生活は現在も送ることができないでいます。
少年時代に聞いた父の訓話は奏功しなかったと告白せざるを得ません。けれども、カントのこの生活態度には大いに倣(なら)いたいと今でも強く思っています。
思うに、徹夜などしてはならず昼夜逆転の生活など論外です。睡眠時間を削って、その時間を仕事や勉強に充てる、というのは中長期的な視野で見れば非常に効率が悪い方法です。
これは仕事や勉強の進め方が間違っているのです。毎日、一定の時間、規則正しく仕事や勉強に励めば睡眠時間を削ったり徹夜したりする必要はないはずです。
意図的に睡眠する時間を削っていると、やがて眠れなくなります。睡眠に復讐されるのです。健康にとって危機的な状況と言わなければなりません。
鬱病などもその兆候(ちょうこう)としてまず眠れなくなる、といいます。横になっても眼が冴(さ)えるばかりで休息できないというのは、とても辛いことだと思います。
わたしもなかなか眠れないときがあります。年齢も関係あるのでしょう。思うに、よく眠り、よく食べ、よく働ける、というのは当然のことではありません。とても幸せなことに違いありません。
読者諸賢よ、よく眠れたことに感謝して今日一日も学業に、家事に、仕事に、邁進(まいしん)しようではありませんか。