国語の苦手な小学5年生が滝中の国語の過去問で7割強の得点を叩き出したときの話
わたしは窮地に立たされていました。国語を見ていた小学4年生の授業の改善案を会社の教務部に示すように言われていたのです。冬休み前のことです。
その当時わたしは副業で、ある会社に所属する社会人のプロ家庭教師として働いていました。ある担当生徒の国語の成績が低迷したまま少なくない時日(じじつ)が経っていました。
生徒の国語の成績は偏差値でいうと40台でした。担当生徒の志望校は東海中学校でしたので親御さんが焦るのも無理はありませんでした。
さようなとき、わたしは悩み苦しんだ挙句、起死回生の妙案を思い浮かべました。過去問を解かせてみてはどうだろう、と考えたのです。
果たして、さような窮余(きゅうよ)の一策が妙案といえるかどうか。むしろ血迷った挙句の滅茶苦茶な暴挙ではあるまいか。さような迷いもありました。
小学4年生に過去問を解いてもらうのはさすがに躊躇(ためら)われましたが当時のわたしに天啓のように閃(ひらめ)いた方策は過去問を解かせる、ということでした。
過去問を解いてもらう前には、やはりそれなりの時間を必要としました。実際に解いてもらったのは、だいぶ時間が経った小学5年生の夏でした。
まず滝中学校の2014年の過去問を解いてもらいました。得点は100点満点中の46点でした。最初はさような点でも仕方あるまい、受験のゴールを知ってもらおう、と考えました。
ところが夏休み中に解いてもらった滝中学校の2017年の過去問の得点が100点満点中73点でした。制限時間をきっちり守っての快挙でした。
担当生徒はもうノリノリで国語の過去問を解いていました。国語の苦手な生徒であることを考慮に入れるならば、これはもう驚天動地の成績と言って何ら差し支えない、と思います。
これで、その生徒のスイッチが入りました。秋には模試の国語の偏差値が60を超えました。そして他の科目も合わせた四科目の成績も過去最高を記録しました。
特筆すべきは、このときの模試で東海中学校の合格判定が文句なしのA判定だったことです。
わたしは、これでようやく窮地から完全に脱することができたのでした。ここに至るまでのご家庭のご理解はもとより生徒自身の忍耐に心より感謝しました。
成績が優秀な生徒は小学5年生の時点でも滝中学校の過去問でよい点が取れる、とはよく聞く話です。
しかしながら国語を苦手とする生徒が小学5年生の夏休みに実際の国語の入試過去問で7割強を叩き出した、というのは全く値打ちが違います。
紙幅の関係上、これ以上詳しくは書きませんが、その後、彼は危なげなく東海中学校に合格していきました。わたしにとって忘れることができない生徒のひとりです。