追悼 星野富弘さん
今年の4月28日に星野富弘さんが呼吸不全のため病院で亡くなりました。享年78歳でした。わたしは彼のファンでしたので密かに哀悼の意を表しました。
彼は中学校の部活動での指導中の事故により手足の自由を失い人生に絶望しかけたのですがキリストに希望を見出して口に筆をくわえて絵画や詩の創作活動をした信仰者です。
わたしは星野富弘さんの作品を目で見るというよりは耳で聴くことで少なからず慰められてきました。
どういうことか。わたしは寅さんのマドンナ役で出演したこともある女優の樫山文枝さんの朗読で星野さんの作品を味わったのです。
星野富弘さんの作品である『かぎりなくやさしい花々』から抄録(しょうろく)した文章を樫山さんが朗読するのですが内容が胸に迫ってきます。
かつて偕成社が出していた「本のカセット」シリーズの中の彼の作品の抄録を耳で聴くのです。わたしは星野さんの作品をカセットテープで聴いて大いに励まされてきました。
昨年、個人塾を立ち上げて今厳しい状況がつづいています。ときに暗澹たる気持ちにもなります。今また煎餅布団の上に寝っ転がって星野さんの作品を聴いています。
星野さんは絶望的で過酷な人生を一生懸命に生き抜きました。わたしも現在、人生の暗い閉塞的なところを通らされています。
子供は好きですが、わたしは教師に向いていないのではないかと悩むのです。悩みや葛藤は尽きません。そういう時に星野さんの人生を想うのです。
わたしは何を小さなことでくよくよしているのか。この年齢まで健常者として生きてこられただけでも果報者だ。神に感謝して喜びに溢れても一向に大仰でないではないか。
わたしは星野富弘さんの人生そのものが彼の遺した一番立派な作品だと思います。彼ほどのハンディを抱えて生きた人は稀有でしょう。
けれども、彼は諦めることなく誠実に人生をまっとうしました。紆余曲折があったにしろ彼は78歳まで生き抜いたのです。
今の日本には、なかなかいない不撓不屈(ふとうふくつ)のキリスト者、それが星野富弘さんだったと思います。