書評『深夜特急』

沢木耕太郎氏の著した『深夜特急』シリーズはいずれも面白い。久々に良い本と巡り合えたと言い得る。読書中は実に幸せな時間を過ごすことができた。全部で六巻あるが全てを愉しみながら読了している。

『深夜特急』はいわゆる紀行文学である。インドのデリーからイギリスのロンドンまでを旅するのだ。ただ、この旅には一つのコンセプトがあり、デリーからロンドンへ行くに際しては、原則として交通手段をバスに限定するというのである。

飛行機は言うに及ばず鉄道も使わず、もっぱらバスのみを使いユーラシア大陸を旅するのだ。著者は旅のプロセスを存分に味わい愉しんでいる。

旅行中に出来する様々なトラブルさえ面白がっている。それがきちんと読者に伝わるのだ。あたかも自分自身が旅先で物を見、異国の街角を歩いているかのような錯覚を覚えるのである。

氏は一年二箇月をこの旅に費やしている。なるほど、それくらいの時間をかけなければ、このような立派な紀行文を書くことはできまい。

わたしは以前から沢木耕太郎という名の作家の存在を知っていたし『深夜特急』シリーズの評判が良いことも承知していた。だが、実際に読むまでには至らなかった。

ところが、気紛れにブックオフで一巻目を百五円で購入し、しばらく放置し、ある日、何の気なしに頁をパラパラ繰って読み出したら止まらなくなってしまったのである。

一気呵成に全巻を読破した。読み方としては一巻目から始めて最終巻の六巻まで順を追って読むことをお勧めしたい。

というのも、話の構成からするとランダムに読まれることを想定していないからである。これは同書を手に取って実際に読み進めれば誰であれ容易に気づけることである。

ちなみに、『深夜特急』という題名について作者は次のように説明している。

ミッドナイト・エクスプレスとは、トルコの刑務所に入れられた外国人受刑者たちの隠語である。脱獄することを、ミッドナイト・エクスプレスに乗る、と言ったのだ。

なお、「ミッドナイト・エクスプレス」の和訳が「深夜特急」であることを確認しておく。

著者が『深夜特急』に記している旅をした時の年齢は二十六歳である。如何にも若い。思うに体力も気力も横溢していたに相違あるまい。そのような時に海外へ行くべきなのだ。

わたしはすでに、かような海外旅行適齢期をだいぶ過ぎているが、せめて健康が保たれている元気なうちに異国へ雄飛したいと強く思っている。

関連する随筆を、こちらに置いておきます。



よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次