読書感想文再考(中学受験)

当塾過去問ライブラリー第2弾です。この出版社の過去問も買い足す必要があります。

以前、読書感想文について、このブログの記事でとりあげましたが覚えておられますか。書き足りなかったので、また読書感想文について読者と共に考えてみたい、と思います。

また例によって丸谷才一が著した『桜もさよならも日本語』(新潮社刊)から引用したい、と思います。仮名遣いは原文のまま記します。読み方と改行は引用者。

本はおもしろいものだといふことを体験させること、本を読む癖をつけること、それが大事だ。

その味を覚えさへすればしめたもので、彼らは将来、西洋十九世紀の長篇小説も、天文学も、ケインズ理論も、コンピューターの本も、読むやうになるかもしれない。

読書感想文でその可能性をつぶしてしまふのは、教育者として正しい態度ではない。

読書感想文といふのは一種の書評である。(中略)一冊の本といふ厖大(ぼうだい)で複雑なものを短い文章で紹介し論評するのは、郵便切手の裏に町全体の地図を書くくらゐ大変なのである。

そんな藝当を子供に強制するのは、角兵衛獅子(かくべえじし)の親方だつてしなかつた。さらに、書評である以上あたり前の話だけれど、読書感想文は批評の一種である。

大げさなことを言ふなと怒る人もゐるかもしれないが、このことは教科書の編者も認めてゐる。

(中略)批評には、対象作品の分析および対象作品と他の作品との比較が、とりあへず必要である。子供には分析力はもちろんない。

そして比較力はどうかといふと、これまでほんのすこししか小説を読んだことのない者に比較が可能なはずはない。

分析と比較からはじまつた意見を述べるには高度な文章力が要るが、これがあやしいことは言ふまでもない。かうして読書感想文は、子供たちを本から遠ざけてゐるのである。

出典:丸谷才一著『桜もさよならも日本語』(新潮社刊)

丸谷の文章を長く引用したので紙幅がなくなってきました。いつも記事を書くときはB5用紙に収まるように書いています。

それはともかくとして、わたしも上記の丸谷の意見に賛成です。それを最後に明記して擱筆(かくひつ)することにいたします。

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