職務質問
警 官:「こんなところで何をしている?」
哲学者:「…………。」
警 官:「君はいったい何者か?」
哲学者:「その答えを探しているのです」
ふたりの会話は永遠に噛み合いません。哲学者は真剣に一ッ事を考えます。彼にとっては当世の流行や最新のトピックなどほんの些事に過ぎません。
人生如何に生きるべきか。人間とは何か。そもそも自分とは何者か。そんな事を考え、突き詰め、自分と対話しているのでしょう。
わたしの父は大学時代に哲学の講義の際に哲学の先生が雨でもないのに長靴を履いて来た事に驚いた、という事を昔、言っていました。幾分かの揶揄(やゆ)を込めて。
まあ、父のさような気持ちも一応、理解できます。燦々(さんさん)と太陽が輝いている日に聴講生の前で長靴を履いている訳ですから。
牧師であった父がくだんの哲学講師を揶揄するのも無理はないかも知れません。「哲学は神学のはしため」と世界史の教科書にも載っていましたし。
しかしながら、わたしは哲学の教師を尊敬します。思想的探究は非常に尊いことだと思います。
誰もが流行りのファッションに身を包み、かっこいいクルマを乗り回し、周りばかり気にして刹那的な生き方をしている中であえて反対の生き方をする。
これこそ本当の恰好いい生き方だと思います。これは口で言うのは簡単ですが実践するのは極めて難しいです。そんな生き方をすれば必ず迫害を受けますからね。
わたしもキリスト者というだけで今までさんざん迫害されてきた経験がありますのでこれは確かです。わたしは学問の中では哲学は神学に次いで尊重したい学問です。
読者諸賢よ、職務質問のご経験はおありですか。わたしは交番まで連行されてさんざ質問され、晴れて無罪放免となりましたが警官は決して謝りはしませんでしたね。大学一年生の時の話です。