暗く長いトンネル(1)
勉強は苦しいです。本当に辛いです。どの子供にとってもそうである、とわたしは考えています。このことを皆さんに早く悟ってもらいたいです。
自分だけが苦しいのではない、ということを、です。そして逃げることなく怠ることなく勉強と真正面からぶつかっていってほしいです。
勉強が辛くて苦しいのもスポーツにたとえれば、よく理解できます。マラソン競技のアスリートたちは走ることを愉しいと思っているでしょうか?
愉しいと思っている選手もあるいはいるかもしれません。けれども結果を出さなければいけない大会(アスリートには結果を出さなくてもいい大会は皆無ですが)のときは、どの選手も例外なく精神的な重圧に歯を食いしばって耐えているはずです。
加えて肉体的にも長距離走は辛いです。お正月に箱根駅伝のテレビ中継などを見ていると、たいていのランナーの顔はゆがみ、呼吸も荒く苦しそうです。
けれどもマラソンや駅伝のたとえなどしなくても親御さんには次の質問により深く納得していただけるはずです。その質問はこうです。「お仕事は愉しいですか?」。
もちろん愉しいと回答される親御さんもいらっしゃるかもしれません。しかし、そういう回答をされた親御さんでも土曜日、日曜日のお休みは待ち遠しいはずです。緊張感を持って休みなく働くことは人間の心身にとって不可能です。
勉強も辛いです。苦しいです。まだあどけなさが残る子供に勉強を強制していいのか悩まれる親御さんももしかしたら、いらっしゃるかもしれませんね。
けれども、わたしが思うに青春時代は決して春のように希望にあふれた明るい時代などではないです。むしろドイツのある作家は青春時代を疾風怒濤(しっぷうどとう)の時代と呼んでいます。
若い人たちは暗く長いトンネルの中をただひたすら進み、出口を求めてあがくのです。けれども出口がみつからず道半ばで他界する若人すらいます。青春はさように厳しい時代なのです。
つづく