安眠に効きます~

我が塾はお盆も開校している。事実、今日も二コマ授業があった。お盆も記事を執筆し続けるつもりでいる。明日は授業が入っていない。だが授業準備はある。今夏は帰省できない。

明日、授業がなくて良かった。土曜日と来週の授業の準備ができる。夏休みも八月中旬である。生徒諸君は我が塾の授業で実力がついたであろうか。特に受験生はどうであるか。夏休みも残り二週間と少しだ。学力の面でも成長してほしい。

そう書いていると欠伸が出た。今朝の授業で塾生も欠伸をしていたのを思い出していた。わたしは塾生の欠伸を品がないとは思わない。頑張っているなと胸中で呟いた。机上にある愛用のメモ帳を見ると今朝は四時半に起きている。今すぐ寝床へダイブしたいが、この稿を完成させるまで待とう。

とうに夕飯は食べ終わっている。ここまで書いてきたが仕切り直すために席を立ち冷蔵庫を開けて箱型のアイスを取り出して小さな匙で掬う。チョコアイスだ。口の中が甘ったるく食べてから水を含んで流しに吐き捨てる。時刻は午後7時を過ぎている。部屋は涼しい。エアコンが静かに冷気を吐き出している。

ふと机の向こうの鉢植えの観葉植物に目を留めた。塾生の母親がわざわざ購入してプレゼントしてくれたものだ。鉢にはプラカードが刺してあり、その先端に小さなカードが挟んであった。カードには「暑中お見舞い申し上げます」と記してあった。カードの裏には「安眠に効きます~」とも記してあった。

パソコンからは高中正義の、古いが軽快な曲が流れている。扇風機が回っていてその風も心地よい。それにしても不思議な贈り物だ。むろん贈り物は嬉しい。プレゼントしたいとする心根が嬉しいではないか。それにしても暑中見舞いに観葉植物である。しかも「安眠に効きます~」とはどういう意味か。

我が塾に解読を任されたエニグマというと大仰か。「安眠に効きます~」という謎の一部は分かるような気がする。ブログに眠りが浅くて寝る前に薬を服用していることを何回か記しているからだ。母親はそれを読んだのだろう。それゆえ「安眠に効きます~」は一応分かるのだが、それをカードに書いて鉢植えとセットで贈る、というとまるで意味が分からない。

そもそも暑中見舞いに鉢植えの観葉植物というセレクトが独特だ。何か意味があるのだろうが頂いてしばらく経つのだがまだ真意が判りかねる。わたしは不満を述べている訳ではない。暑中見舞いは頂いて素直に嬉しい。ただ、その母親の真意が知りたいのだ。

真意が判らないといえば、その母親がそもそも我が塾を選んでくれた理由も完全には腑に落ちていない。なぜだろうか。わたしはその親子に好意を持っている。それゆえエニグマを解明したい。喉に引っかかっている魚の小骨を飲み下したいのだ。

観葉植物に花言葉はあったのだろうか。アロエのような見た目の植物で教室に馴染んでいる。エニグマは母親が教師に突き付けた問題かも知れない。解答は自分で探すしかない。パソコンからはオリジナルラブのバラードが流れている。

観葉植物を贈った真意は何ですかと直接、母親に尋ねるのは野暮というものだ。むしろ、わたしが見事に謎を解いて、あなたの真意はこれでしょう、と突きつける方が小気味がいい。けれどもヒントがない。

「安眠に効きます~」というのはこの観葉植物の効能書きか。煎じて飲めばぐっすり眠れるということか。母親は鉢植えを渡してくれたときに余計なことは喋っていない。難問である。わたしは試されているのだろうか。いやいやと首を振る。

けれども、この観葉植物は教室のインテリアとして悪くない気がする。教室に溶け込んでいる。邪魔というのではない。役に立っているのだ。それゆえ、これ以上あれこれと詮索しないのが賢明なのだろう。母親とその子が志望校に合格した暁にはもしかしたら教えてくれるかも知れない。それまでは口を噤んでおこう。

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