読めて、書けて、受かる中学受験専門国語塾。
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小学生の頃、一年生だったか二年生だったか、正確には思い出せないが同じクラスにひとりの女の子がいた。とても品がよく、慎ましい良家のお嬢さんだったかも知れない。育ちがいいし、礼儀正しかったからだ。寡黙でクラスでも目立たぬ存在だった。でも、なぜわたしは彼女を覚えているのだろうか。
彼女は品が良すぎて田舎の小学校では浮いていた。それで彼女は皆から疎まれていた。背は小学生としては相応の高さだった。身なりは地味だった。彼女の微笑んでいる姿を見たことがなかった。
ある日、学校の廊下を歩いていた。板張りで明るい廊下だったと思う。そうしたところ彼女を認めた。モンペのようなズボンを履いていた。そして、わたしの後についてくる。初めは露骨に嫌な顔をしたが彼女は意に介さない。少なくともわたしにはそう見えた。
とうとうわたしは「ついてくるな」と喚いた。彼女の目は悲しそうだった。そのあと、彼女は何処かに消えた。あまりにもあっけなかった。悪い子ではなかった。何なら聡明なところもあったように覚えている。
彼女の歩き方は楚々として品があった。歩き方が普通の女の子のそれ以上だった。もしかしたら日本舞踊でも習っていたかも知れなかった。しかし、あの当時はそんなこと深く考えるでもなく彼女の仲間だと見られることを極端に恐れた。
彼女はあのとき、なぜわたしについてきたのだろうか。わたしなら悪く言わない、あるいは理解してくれると思ったのか。疎んじているクラスメートとは一味違うと思い込んだのかも知れなかった。それなのに――ついてくるな、と喚いてしまった。
彼女は恥ずかしがり屋さんだったかも知れない。ほとんど口を利かない。彼女の声はどんなだったか…。小さな声だったか。低い声か。
彼女は皆から距離を置かれていた。それでも毎日、学校に通って授業を受けていた。家では泣いていたかも知れないが学校でべそをかくことはなかった。凛としていた。
彼女はわたしに味方になってほしかったのだろうか。それだけ追い詰められていたのか――それなのに。
わたしは目立たず皆から疎まれていたか弱い女の子が助けてくれ、と差し伸べてきた手を払いのけたことになるのだろうか。ただ、わたしはあなたを覚えている。楚々とした歩き方を。品のある挙措を。
あなたは、わたしが見上げている空と同じ空の許、何処かの街で母親として子どもを立派に育てているのかも知れない。
もし、小学校の同窓会があれば出席してみたい。何よりもあなたと話し合いたい。そして旦那さんののろけ話をいつまでも聞いていたい。子どもの自慢話にもどこまでも付き合おう。
そのとき、わたしは真面目な人柄のあなたに冗談を言って笑わせたい。そうだ、あなたの笑顔を今度こそ見てみたいのだ。
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