三〇アップ

ずっと国語の成績が低迷していたが、おめでとう!よく頑張ったね。一番低かったときと比べて偏差値が三〇以上上がっているね。

わたしが小言を言うと不機嫌そうにしていたときもあったね。君は冗談を言っても笑わなかった。けれども、どんな時もわたしに敬語を遣っていた。

入塾して半年は超えているけれど、ようやくいい結果を残せたね。基本問題を解こう、と提案した時、君は首を縦に振らなかった。あくまでも発展問題を解く、といって譲らなかった。それでも毎回、我が塾へ通ってくれている。今に至るまで。

手作りの小テストやプリント類が雑然とバッグに入っていたね。見かねて収納するためのクリアファイルをあげたら、きちんと整理してきたね。

君のお母さんが今回の成績のことで、わたしに感謝を伝えるために四階の教室までわざわざ来てくれた。深々と頭を下げてくださった。

「今後ともよろしくお願いします」と頭を下げていたよ。わたしも深く頭を下げた。そして何だか温かい気持ちになれたよ。

君は返事がいいね。いつでも「はい」と言ってくれる。ただ、「はい」の数が多すぎる。分からない時は分からない、と言って構わないのだよ。

分からないから、できないから、塾へ通う意味があるのだ。わたしは君をただの一度もきつく叱ったことはない。分からん、というのを分からせるのが、わたしの仕事だ。

我が塾は偏差値二十五アップの実績を謳っているが今回の君の成績はそれを軽々と超えている。偏差値三〇アップなら本を書けるのではないか。『ビリギャル』の二番煎じになるかも知れないが構うものか。

君にホームページに載せるため、後ろ姿を撮影させてほしいと頼んだね。でも、君は嫌だと言った。君の意思は変わらなかった。でも、わたしは君のことが嫌いではない。何となれば、我が塾を頼って来た小さな生徒だからね。

君がここまで伸びてくれたことは我が塾にとって嬉しい実績になった。よく頑張った。君のお母さんにもそう伝えておいた。満更でもなさそうにして階段を下って行かれた。

成績が上がって嬉しいはずなのに今回はこちらから問い質してようやく知らせてくれたね。わたしはそれを聞いて急に饒舌になった。成績アップの報告は塾講師にしたら真っ先に聞きたい大好物なのだ。

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