秋、バイクで旅に出る(前編)

かつて今くらいの時季に二回に分けて旅行に行ったことがある。九月末と十月末だ。まだ塾を立ち上げる前の話である。いずれも名古屋から日帰りで行ける場所だ。バイクでの一人旅だ。

いずれの日も寝床でいつまでも愚図愚図していたら勿体ないような秋晴れの日だった。天高く馬肥える時季のことだ。秋の好日がバイク旅に誘った。わたしに否やはあるはずがなかった。

まず、九月末に実家に帰ったのだが、帰省中に伊良湖岬まで行ってきた。伊良湖岬ならば名古屋から日帰りできる場所だ。九月のソロツーリングで高速道路は一切、利用していない。すべて下道である。伊良湖ツーリングでは伊良湖の絶景を堪能できた。

わたしの実家は豊橋市にある。わたしの場合、両親の住まいに泊まることができた。バイクで行くとなると、名古屋の平針から豊橋の実家まで休憩なしで約二時間かかる。思うに、名古屋から伊良湖岬まで行っていけないことはない。ただ、下道だけを走って日帰りするとなると、やはり強行軍にはなるはずである。

ツーリングの行程としては豊橋市を出発して田原市の国道二五九号を伊良湖岬までひたすら走る、というものである。目指すは伊良湖岬にある伊良湖クリスタルポルトという道の駅だ。

伊良湖までの途中、田原めっくんはうす、という道の駅があるが、こちらの方が有名かも知れない。旅行ガイドブックには必ず載っている道の駅である。しかし今回のツーリングでは立ち寄らなかった。その必要を覚えなかったからだ。

二五九号を走っていると懐かしい思い出が頭をよぎる。若い頃、教会の青年会の皆と自動車に乗って夏に恋路が浜や伊良湖ビューホテルに行ったことがある。ビューホテルのラウンジで珈琲を飲みながら夏の落日をうっとりとずっと眺めていた。いい思い出のうちのひとつだ。それでも、わたしはバイクで風を切って疾駆していたときには、なかなかセンチメンタルな気持ちにはなれなかった。それは名古屋での日々の生活の心配や仕事上の悩みが少なくなくあったからか。

二五九号は土地の人は地獄線とも呼ぶ。交通事故が多発するからだろうか。わたしは走行中もうそんな詰まらないことしか考えていなかったかも知れぬ。そうこうしているうちに目指していた伊良湖岬にある道の駅に到着したが売店では飲み物すら買わずにトイレに寄って早々に帰路に就いた。

帰り道に、あかばねロコステーション、というサーファー御用達の道の駅で実家の両親にお土産を買って、しばらく閑散とした田舎道を快走してツーリングを満喫してから実家に帰った。晩の夕餉には焼肉が用意されていた。わたしの好物である。両親の心配りが嬉しかった。

時間を一箇月ほど進めよう。十月下旬、三重県にある御在所岳まで行ってきた。御在所ロープウェイに乗った。近くに湯の山温泉がありロープウェイから見下ろせる。当日は風がとても強い日だった。

バイクで四日市市街を走っているときは、さほどでもなかったが御在所岳の麓にあるロープウェイの駅周辺の風の強さはどうだ。ロープウェイを待っている間、時間が勿体なかったので読書しようとしたが強風のため本も開けないほどだった。強く吹く風が、とても印象に残っている。 (つづく)

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